通常、鼻や口から吸い込まれた空気は、スムーズに肺まで達します。 ところが、この空気の通り道(気道)が狭くなっていると、乱気流が起こって音が出ます。 リコーダーが鳴るのと同じような仕組みです。 また、空気が上顎の奥の方(軟口蓋)やのどちんこ(口蓋垂)を振動させて、音を出すこともあります。 唇を震わせて吹くトランペットと同じメカニズムです。 さらに、これらの音が、のどや鼻で共鳴して大きないびきとなるのです。 気道が狭くなる原因には、次のようなものが挙げられます。 ●舌が大きい ●下あごが小さい ●首が太くて短い ●口蓋扁桃(扁桃腺)や喉頭扁桃(アデノイド)が大きい ●口蓋垂(のどちんこ)が長い ●鼻が詰まっている ●口呼吸をしている ●口の周りの筋肉(口輪筋)が弱い ●年齢・体型・性別との関係
他にも、いびきをかきやすくなる要因がいくつかあります。 子供がいびきをかいている場合には、鼻が詰まって口呼吸になっているか、 アデノイドが大きくて、喉で気道が狭くなっている可能性があります。 高齢者になると、舌や喉の筋肉が弱くなるので、仰向けに寝ていると 舌が喉に落ち込んで気道が狭くなります。 肥満もいびきの危険因子です。 日本人はもともと口やのどの体積が小さいので、 少し太っただけでも、喉に脂肪がついて気道が狭くなりやすいのです。 一般的に「いびきは男性のもの」という意識がありますが、 女性でも悩んでいる方がしばしばいます。 ある製薬会社が男女合わせて約3,000人に行ったアンケート調査では、 いびきをかく人は男性の41.5%、女性は15.1%という結果でした。 いびきをかく女性は、あごの小ささが原因であることが多いようです。
肉体的あるいは精神的な疲労が溜まってくると、 それを回復しようと深い睡眠が多くなります。 舌や喉の筋肉は、深い睡眠のときに最も緊張がなくなるので、 舌が喉に落ち込んで気道が狭くなり、いびきをかきやすくなります。
飲酒をした時にだけ、いびきが出る方もいます。 二日酔いの日には顔がむくみやすいように、 アルコールは身体に水分を貯める働きがあります。 酔って眠っているうちに、喉がむくんで気道が狭くなるため、 いびきをかいてしまうのです。
また、旅行や出張でホテルに泊まった時にだけ、 いびきを指摘される人もいます。 ホテルの部屋は湿度が低く、鼻や喉が乾燥しやすくなっています。 鼻が乾くと鼻呼吸がしにくくなり、口を開けての口呼吸となります。 口を閉じていた間は、上顎と下顎に挟まれていた舌が、 口を開けることで、喉に落ち込みやすくなって、いびきをかいてしまうのです。
「大いびきの後、呼吸がしばらく止まる」 心配して見ていると、再びいびきは始まる・・・。 このようなことが、毎晩何回も繰り返されるようなときは要注意。 「睡眠時無呼吸症候群」という病気の可能性がありますから、 早めに医療機関を受診したほうがよいでしょう。
いつもはいびきをかかないのに、急にいびきをかき始めたときも、 大きな病気が隠れていることがあります。 脳血管障害などで意識障害を起こすと、 舌が喉に落ち込んでいびきをかくことがあります。 目覚めているときに発作が起これば分かりやすいのですが、 眠っているときに脳卒中などが起きても気付きにくいものです。 ベッドパートナーの急ないびきに気付いたときには、 身体を軽くつねるなどして、痛みや刺激で起こしましょう。